仕出し弁当・宅配弁当業界の人手不足は「採用すれば解決する」という問題ではありません。多くの事業者が人手不足に悩み続ける理由は、「製造側」と「配送側」で根本原因が全く異なるのに、同じ解決策で対応しようとするからです。この記事では、2つのタイプを分けて整理し、それぞれの具体的な打ち手を解説します。
人手不足の種類を「製造側」と「配送側」に分けて把握する
人手不足は一括りに語られることが多いですが、製造側(料理人・盛り付けスタッフ)と配送側(ドライバー・配送スタッフ)では、原因も打ち手も全く異なります。まず自社のボトルネックがどちらにあるかを把握することが最初のステップです。
この表の「打ち手の方向性」列に注目してください。製造側はメニュー絞り込みと標準化が先決で、配送側は「自社で雇う」という発想から離れることが突破口になります。どちらが先かを判断するには、繁忙期に最初に破綻するのが「作れない」のか「届けられない」のかを確認するのが最も確実です。
配送側の人手不足は「自社雇用しない」という発想で解決できる
自社でドライバーを抱えることにこだわっている事業者が多いですが、月間食数が少ない・または季節変動が大きい場合、固定費としての自社雇用は採算が合いません。コストを比較すると、外注配送が有利になるケースが意外と多い。
💰 自社雇用 vs 外注配送のコスト比較(月50ルート・1日2往復を想定)
固定費と変動費の構造が全く異なる。食数が少ない日も固定費は変わらないことを念頭に置くコスト項目
自社ドライバー雇用
外注配送(委託)
備考
人件費
月25〜35万円
(社保含む)
月15〜25万円
(件数×単価)
外注は食数が少ない日も比例して下がる
車両費
月3〜8万円
(リース・保険・燃料)
0円
(外注側が負担)
自社保有車両は固定費になる
繁忙期の
急増対応
残業・アルバイト追加が必要
→急な採用はコスト増
依頼件数を増やすだけ
→即日対応可能なケースが多い
変動対応力は外注が優位
月間固定費
合計目安
28〜43万円
(食数に関係なく発生)
15〜25万円
(食数に比例して変動)
月1,000食以下なら外注が有利になるケースが多い
軽貨物の業務委託・マッチング型配送サービスを使えば、繁忙期だけ依頼件数を増やす柔軟な体制が作れます。ただし繁忙期の2ヶ月前には外注先の確保・テスト配送を完了しておく必要があります。繁忙期に駆け込みで探すと枠が埋まっていることがほとんどです。
製造側の人手不足は「メニュー絞り込み×標準化」が先決
製造側の人手不足に対して「採用を増やす」ことを先にやってしまう事業者が多いですが、業務が標準化されていない状態で人を増やしても混乱が増えるだけです。正しい優先順位があります。
特に重要なのは優先①のメニュー絞り込みです。20種類以上のメニューを提供している事業者が、コアメニュー5品に絞り込んだだけで仕込み時間が30〜40%短縮できたケースがあります。種類の多さは顧客満足度よりも製造コストと人手に直結しています。
繁忙期(3〜4月・年末)に向けて2ヶ月前から準備する
「繁忙期になってから人手を探す」では手遅れです。製造・配送の両方を繁忙期の2ヶ月前から動かすことで、繁忙期に余裕を持って対応できる体制が整います。
📅 繁忙期(3〜4月・年末)に向けた2ヶ月前からの準備スケジュール
「繁忙期になってから探す」では手遅れ。製造と配送それぞれの準備を2ヶ月前から動かすタイミング
製造側の準備
配送側の準備
2ヶ月前
繁忙期メニューを確定。通常メニューから品目を絞り込み、仕込み効率を最大化するメニュー構成に変更する
外注配送会社・マッチングサービスに問い合わせ。繁忙期の配送枠を予約する(直前では枠が埋まる)
1ヶ月前
追加スタッフの採用・OJT開始。標準化されたレシピで短期間に即戦力化できる体制を整える
外注先との配送テストを実施。配達ルート・受け渡し方法・時間帯を確認して問題を事前に潰す
2週間前
最大食数でのシミュレーション(試作・盛り付け練習)。ボトルネックとなる工程を事前に特定する
緊急時の連絡体制を確認。外注先が対応できない場合の代替手段(赤帽等)をリストアップしておく
採用の落とし穴:よくある3つの失敗パターン
人手不足に焦って採用を進めると、かえってコストと混乱が増えるパターンがあります。「採用すれば解決する」という思い込みが問題を悪化させます。
⚠️ 人手不足対策でよくある採用の落とし穴
「採用すれば解決する」という思い込みがかえって問題を悪化させるパターン【落とし穴①】外国人材を採用したが管理コストで利益が消えた
「外国人を採用すれば人件費が安くなる」と考えて採用。しかし在留資格の確認・日本語でのコミュニケーション、食品衛生教育など管理工数が想定外に増え、かえって既存スタッフの負担が増加した。
✅ 正しい対処:外国人材の活用には「マニュアルの多言語化」「専任のOJT担当者の配置」が前提条件。これらの体制が整っていない段階での採用は管理コストが上回るリスクが高い。まず既存業務の標準化を先に行う。
【落とし穴②】繁忙期だけアルバイトを採用したが戦力にならなかった
「3月〜4月だけ人手が欲しい」と2ヶ月前から求人を出したが、応募が集まらず採用できたのは1週間前。OJTが追いつかず繁忙期に戦力にならないまま終了。採用コストと教育コストだけが残った。
✅ 正しい対処:繁忙期アルバイトの採用は最低3ヶ月前から動く。採用後2週間のOJT期間を確保した上で、繁忙期の1ヶ月前には独り立ちできる状態にする逆算スケジュールが必要。または通年の少人数採用で対応する。
【落とし穴③】求人費用をかけたが離職率が改善されなかった
「とにかく採用を増やせば解決する」と求人媒体に毎月費用をかけ続けた。しかし離職の根本原因(早朝勤務・休憩なし・時給が低い)が改善されていないため、採用してもすぐに辞める悪循環が続いた。
✅ 正しい対処:採用強化の前に「なぜ辞めるか」のヒアリングを実施する。早朝の時給を+100〜200円上げる・休憩時間を明確にする・シフトに柔軟性を持たせる——小さな改善が離職率を大幅に下げることが多い。
よくある質問
仕出し弁当・宅配弁当業界の人手不足対策についてよく寄せられる質問をまとめました。
まず在留資格の種類と就労可否の確認から始めてください。仕出し弁当・宅配弁当業で従事できる在留資格は「技術・人文知識・国際業務」「特定技能」「永住者」「日本人の配偶者等」などがあります。採用前に必ず在留カードで資格を確認し、食品衛生の説明は多言語対応の資料を用意することが大切です。また採用前に既存の業務マニュアルを整備しておくことが、外国人材の早期戦力化の前提条件です。
可能です。軽貨物の業務委託サービスやマッチングアプリ型配送サービス(ラストワンマイル系)であれば、必要な時だけ依頼する形が取れます。ただし繁忙期は外注側も需要が高まるため、繁忙期の2ヶ月前には問い合わせ・登録・テスト配送を済ませておくことをおすすめします。直前に問い合わせると配送枠が確保できないケースがあります。
早朝勤務の離職原因は「時給の割に合わない感覚」「体力的なきつさ」「シフトの固定化」の3つが多いです。まず早朝時給を+100〜200円上乗せする(深夜手当に近い感覚を持てる水準)、次に作業分担を明確にして1人に負担が集中しないシフト設計をする、最後に週1回のシフト希望を取る柔軟な体制を作る——この3つだけで離職率が大幅に改善するケースが多いです。
配送品質の担保には「引き渡し確認書の整備」「到着時刻の記録」「クレーム時の連絡フローの明確化」の3点が必要です。外注先との契約時にSLA(サービスレベル合意)として配達時刻・梱包の取り扱い基準・クレーム時の対応フローを文書化しておくことで、品質トラブルを事前に防ぐことができます。テスト配送で実際の品質を確認してから本格運用に移行することをおすすめします。
「採用より先に仕組みを整える」が人手不足解消の正しい順序
人手不足の解決策は「採用量を増やすこと」ではありません。製造側ならメニュー絞り込みと標準化、配送側なら外注ハイブリッドの設計——この仕組みを整えてから採用を強化することで、採用した人が定着する職場が生まれます。繁忙期の2ヶ月前から準備を始めることと合わせて、今日から動ける打ち手から実行してみてください。
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