今日は、多くの宅配弁当業者さんが気になっている「原価率」について詳しく解説していきたいと思います。
原価率は売上高に対する原価の割合のことで、この数字を把握し適切にコントロールすることが安定した利益を生み出すカギとなります。特に同業他社との価格競争が激しい宅配弁当業界では、原価率の改善が重要な経営課題と言えるでしょう。
もちろん、ただ原価を下げればいいというものではありません。お客様に満足していただける品質や味を維持しつつ、収益性を高めるためのバランス感覚が求められます。
本記事では、仕出し弁当、宅配弁当、日配給食(日替わり弁当)、ケータリングなど食事を提供するサービスを手がける事業者の皆さまに向けて、原価率の基本的な考え方から業界平均値、そして原価率を下げるための具体的な方法までを分かりやすくお伝えしていきます。
原価率を意識した経営にシフトし、ビジネスを強化したいとお考えの方は、ぜひ参考にしてみてくださいね。
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宅配弁当の原価率とは
原価率の定義と計算方法
原価率は、売上高に占める原価の割合を示す指標です。つまり、商品やサービスを提供するために必要なコストが、売上高のどのくらいを占めているかを表しています。
原価率は次の式で計算します。
原価率(%)= 売上原価 ÷ 売上高 × 100
売上原価には、食材費、容器包装費、労務費など、商品を提供するために直接必要となる費用が含まれます。運搬費については、多くの場合、販売費及び一般管理費(販管費)として扱われます。
例えば100円の原価を使って500円の弁当を作り、売上げた場合、原価率は以下のように計算できます。
原価率(%)= 100円 ÷ 500円 × 100 = 20%
この場合、売上高の20%が原価となります。
なぜ原価率が重要なのか
原価率は、事業の収益性を判断する上で非常に重要な指標です。
原価率が高ければ、たとえ売上高が大きくても利益は少なくなってしまいます。逆に、原価率が低ければ、少ない売上でもより多くの利益を得ることができるのです。
宅配弁当業界は、他社との価格競争が激しいことに加え、食材価格の変動や人件費の上昇など、コストアップの要因も多くあります。
そのような環境下で安定的に利益を出していくには、常に原価率を意識し、改善に努めることが欠かせません。
同時に、原価を下げすぎるあまり品質が落ちてしまっては本末転倒です。お客様に満足していただける商品を提供し続けられるよう、原価率と品質のバランスを取ることが宅配弁当業者には求められているのです。
宅配弁当の原価率はどれくらいが適正?
宅配弁当業界の平均的な原価率
宅配弁当の原価率は、業者によって差はあるものの、一般的には30%から40%程度だと言われています。この数字は、宅配弁当業界の平均的な原価率を表していると考えられます。
ただ、この平均値はあくまで目安であって、個々の事業者の原価率は、提供する弁当の内容や価格帯、仕入れ条件、製造工程の効率性などによって大きく変わってきます。
中には、原価率が50%を超える業者もあれば、30%を切る業者もあるかもしれません。自社の原価率が業界平均と比べてどの程度なのかを把握することは、競合他社との比較や自社の改善点を見つける上で重要です。
原価率を左右する要因にも注意
では、宅配弁当の原価率を左右する要因には、どのようなものがあるのでしょうか。主なものとしては以下が挙げられます。
- 食材の仕入れ価格
- メニューの内容と価格設定
- 容器包装のコスト
- 調理工程の効率性
- ロスの発生率
- スタッフの労働生産性
これらの要因は、どれも原価に直結するものです。例えば、食材の仕入れ価格が高ければ原価も上がりますし、メニューの内容によっては手間がかかり過ぎて原価が跳ね上がることもあります。
また、調理工程が非効率的だったり、ロスが多く発生したりすれば、それだけ無駄なコストがかさんでしまいます。スタッフの労働生産性が低ければ、同じ仕事量をこなすのにより多くの人件費が必要になります。
このように、原価率は様々な要因の影響を受けます。自社の原価率を適正な水準に保つには、これらの要因を一つ一つ丁寧に分析し、改善策を講じていくことが求められます。
宅配弁当の原価率を下げるには?
原価率が高いと利益が出にくくなるので、できるだけ原価率を下げたいというのが宅配弁当業者の皆さんの本音ではないでしょうか。でも、どうすれば原価率を下げられるのか、具体的なアイデアが浮かばない方も多いかもしれません。
ここからは、原価率を下げるためのヒントをいくつかご紹介します
食材の仕入れ方法の工夫
原価の中で大きな割合を占めるのが食材費です。食材の仕入れ方法を工夫することで、原価を下げる余地は大いにあります。
例えば、旬の食材を積極的に使うのも一つの方法です。旬の食材は味も良く、価格も手頃なことが多いですからね。産地直送で仕入れるのも良いかもしれません。産地との直接取引なら、中間マージンを省くことができます。
また、食材の発注量や発注タイミングを見直すのも効果的です。必要以上に在庫を抱えると、食材のロスにつながりかねません。需要予測を立てて、適量を適時発注するようにしましょう。
食材ロスの削減策
せっかく仕入れた食材も、ロスが出てしまっては無駄になってしまいます。ロスを減らすことは、原価率を下げる上で非常に重要なポイントです。
まずは、売れ残りを減らすための需要予測の精度を上げることが大切です。過去の販売データを分析して、曜日や天気、季節などに応じた需要の傾向を掴みましょう。
また、調理工程で出る食材の端材や、売れ残った弁当を再利用する工夫も必要です。端材は別のメニューに活用し、売れ残りは割引販売するなど、できるだけ無駄なく使い切る姿勢が大切ですね。
メニューの改善
メニューの内容を見直すことで、原価率の改善が期待できます。
高価な食材を使ったメニューは、原価率が高くなりがちです。そのような食材は、特別メニューとして限定的に提供するなど、メリハリを付けると良いでしょう。普段のメニューには、手頃な価格の食材を使って、バランスの取れた献立を心がけましょう。
同じ食材を使って複数のメニューを作れるような献立にするのも一案です。食材を無駄なく使い切ることができ、仕入れの手間も省けます。
また、メニュー数が多すぎると、食材の管理が難しくなり、ロスが出やすくなります。提供するメニューを絞り込むことで、在庫管理の効率化とロス削減が期待できるでしょう。
スポット品を使って原価率を下げる方法も
食材の仕入れにおいて、スポット品を上手に活用するのも原価率を下げるコツの一つです。
スポット品とは、通常の仕入れルートとは別に、臨時で安く売られている食材のことを指します。例えば、在庫処分セールや、産地での余剰在庫の放出などがあります。
これらのスポット品を利用することで、通常よりも安く食材を仕入れることが可能です。ただし、スポット品は不定期に出てくるものなので、常に情報をアンテナを張っておく必要があります。
また、スポット品を使ったメニューを臨機応変に提供できるよう、メニュー開発力を磨いておくことも大切ですね。
スポット品については以下でご紹介しています。
スポット品の交渉については日本仕出し営業代行センターまでお気軽にご相談ください。
包材コストの見直し
宅配弁当には欠かせない包材、つまり弁当容器や包装資材などのコストも、原価率を考える上で無視できません。実は、包材費は弁当全体の原価の約10%を占めているそうです。
原価率を下げるためには、この包材費を少しでも抑えることが効果的です。例えば、包材の仕入れ先を見直して、より安価で質の良い商品を選ぶのも一つの方法でしょう。
また、包材のデザインを工夫することで、コスト削減が可能かもしれません。過剰な包装は避け、必要最小限の材料で魅力的な見た目を実現するなど、知恵を絞ってみましょう。
食材費ほどの大きな割合ではないかもしれませんが、包材費を10%削減できれば、原価率を1ポイント下げられることになります。小さな改善の積み重ねが、利益率のアップにつながっていくのです。
ただし、包材のコスト削減にのみ注力するのは禁物です。弁当容器の品質が下がれば、お客様の満足度が下がるかもしれません。コストと品質のバランスを取りながら、最適な包材を選ぶことが肝心ですね。
原価率は維持して弁当の販売単価を上げ、利益率を上げる
適切な価格設定の重要性
まず大切なのは、自社の商品価値を正しく理解し、適切な価格設定を行うことです。安すぎる価格設定は、利益を圧迫するだけでなく、商品の価値を下げてしまう恐れもあります。
一方、高すぎる価格設定は、お客様の手が届かなくなってしまうかもしれません。自社の弁当の強みや独自性を十分に分析し、お客様に納得していただける価格設定を心がけましょう。
価格設定の参考として、ライバル店の価格帯を調査するのも有効です。ただし、単純に他店と同じ価格にするのではなく、自社の商品価値とのバランスを考えることが重要ですね。
単価アップのための戦略事例
単価を上げるためには、商品の付加価値を高めることが欠かせません。以下に、単価アップの戦略事例をいくつかご紹介します。
- プレミアム食材の使用 通常メニューよりも少し高級な食材を使った、プレミアムメニューを提供してみましょう。例えば、通常の牛肉の代わりに和牛を使うなど、食材のグレードを上げることで、単価アップが可能です。
- 季節や旬を活かしたメニュー展開 季節の食材や旬の味覚を取り入れた期間限定メニューを提供するのも効果的です。「今しか味わえない」という希少性が、単価アップを正当化してくれるでしょう。
- ボリュームアップ 少し大きめのサイズの弁当を提供し、「お得感」を訴求するのも一案です。食材コストは上がりますが、販売単価を上げることで利益率を維持できます。特に20~40代の男性が多い地域の場合はボリューム感を求められます。
- 健康や美容に特化したメニュー 健康志向や美容意識の高いお客様に向けて、栄養バランスに優れた弁当や、美容に良い食材を使った弁当を提案してみましょう。健康や美容は、多くの人が対価を払う価値があると考えているテーマです。
- お弁当と一緒に他の商品を販売 お弁当と一緒に、デザートやドリンク、おつまみなどを販売してみるのはどうでしょうか。関連商品を組み合わせることで、客単価を上げることができます。
いかがでしょうか。単価を上げるためには、商品の魅力を高め、お客様に価値を感じていただくことが何より大切です。
自社の強みを活かしながら、お客様のニーズを捉えた商品開発と価格設定に努めていきたいですね。単価アップの工夫を重ねることで、利益率の改善につなげていきましょう。
高単価宅配弁当で、原価率の割合を下げる
原価率を下げることは利益率を上げるための重要な方法ですが、一方で、原価率はそのままで販売単価を上げることでも、利益率を高めることができます。
実は、宅配弁当で利益率を上げるには、この販売単価を上げるという方法が非常に有効なのです。
なぜなら、お弁当事業では、人件費や家賃といった固定費がある程度一定のため、単価が一定のラインを超えると利益率が大きく上昇するからです。
つまり、単価を高くすればするほど、利益率が上がっていくのです。
例えば、原価率が30%だとして、500円の弁当と5,000円の弁当を比べてみましょう。
500円の弁当の場合、原価は150円(500円 × 30%)ですが、5,000円の弁当では原価が1,500円(5,000円 × 30%)にもなります。単価が10倍になると、同じ原価率でも原価の金額は10倍の開きが出てくるのです。
さらに、粗利で考えるとその差はより明確になります。 売価500円、原価率30%の弁当の粗利は350円(500円 ×(1-0.3))ですが、5,000円の仕出し弁当では3,500円(5,000円 ×(1-0.3))の粗利が出ます。なんと、その差は10倍にもなるのです。
これを100食販売したケースで考えると、500円の弁当では粗利が5万円(50,000円)ですが、5,000円の弁当では、なんと50万円もの粗利が出ることになります。
もちろん、高級な食材を使う場合はコストも上がるので、一概にこの数字通りにはいきませんが、それでも販売単価を上げる努力をすることの重要性は、お分かりいただけるのではないでしょうか。
また、お弁当屋は1日の生産量に限界があるため、少ない販売数でも利益を出せる高単価商品を扱うことが、ビジネス的にも有利なのです。
ただ、いきなり5,000円近い高級弁当を作るのは難しいと感じる方もいるかもしれません。通常の飲食店では、急に高価格帯のメニューを出すと注文が減り、客離れを起こしかねません。それは、店舗での「待ち」の営業スタイルに原因があります。
しかし、宅配弁当の強みは、こちらから「営業」ができるという点にあります。高単価の弁当メニューを営業して販売することが可能なのです。
高級仕出し弁当事業にシフトすることで利益率を高める方法については、以下の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
宅配弁当原価率についてよくある質問と答え
業態によって原価率の適正水準は異なります。例えば、高級志向の仕出し弁当は、食材のグレードが高いため、原価率が高くなる傾向があります。一方、大量生産型の弁当は、規模のメリットを活かしてコストを抑えられるため、原価率は比較的低くなります。自社の業態や商品の特性を考慮して、適正な原価率の目標を設定することが大切です。
はい、食材の質を下げることは避けた方がいいです。食材の質を下げれば原価率は下がるかもしれませんが、お客様の満足度が低下し、リピート率や口コミによる新規顧客の獲得に悪影響を及ぼす可能性があります。長期的な視点で考えると、品質を維持しつつ、仕入れ方法の工夫や調理工程の効率化など、他の方法で原価率を下げることが賢明です。
宅配弁当の原価率を下げ、営業のお手伝いをいたします。
これまで、宅配弁当の原価率について詳しく見てきました。原価率を下げる方法と、原価率を維持しつつ単価を上げる方法、両方の重要性がお分かりいただけたのではないでしょうか。
ここで重要なのは、原価率の改善と売上アップを同時に目指すことです。原価率が下がっても、売上が伸びなければ、利益の増加は望めません。逆に、売上は伸びても原価率が高くては、やはり利益は限られてしまいます。
原価率の改善と売上アップ、この両輪をバランス良く推進していくことが、宅配弁当ビジネスの成功には欠かせないのです。
具体的には、以下のようなポイントを押さえておくことが大切でしょう。
- 常に原価意識を持ち、あらゆる角度からコスト削減の機会を探る
- 品質を維持しつつ、効率化できる部分は積極的に改善する
- お客様のニーズを捉え、付加価値の高い商品を開発する
- 適切な価格設定で、お客様の満足度と利益率のバランスを取る
- 営業活動を強化し、新規顧客の獲得と既存顧客のリピート率アップを図る
- 効果的な販促活動で、ブランド価値を高め、認知度を上げる
しかし、これらを実践するのは簡単ではありません。特に、営業面での課題を抱えている事業者さんも多いのではないでしょうか。
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