「売上アップのために何をすればいいか」を聞かれる前に、「なぜ今の売上が上がっていないか」を特定することが先決です。原因を特定せずに施策を打っても、ほとんどの場合は効果が出ません。この記事では、売上が上がらない本当の構造と、今すぐ取り組む優先課題の見つけ方を整理します。
売上が上がらない原因は「1つ」ではなく「4要素の掛け算」
宅配弁当・仕出し弁当の売上は「顧客数 × 発注頻度 × 1回あたりの食数 × 単価」という掛け算で決まります。どれか1つが問題でも売上は伸びません。多くの事業者が「売上が上がらない」と言う時、実際には異なる問題が混在しています。
この4要素のどれが問題なのかを先に特定することで、打つ手が変わります。「顧客数が少ない」なら新規開拓、「発注頻度が落ちている」なら既存顧客のフォロー、「食数が少ない」なら担当者への拡大提案、「単価が低い」なら高単価メニューの導入——それぞれ打ち手が全く異なります。
今すぐ取り組む優先課題を4ステップで特定する
「何から手をつければいいか分からない」という経営者に向けて、4ステップで優先課題が分かる診断フローを用意しました。STEP1から順番に確認して、最初にYESになった問題が今すぐ取り組む課題です。
ほとんどの事業者はSTEP1かSTEP2で止まります。発注が来なくなった顧客が1社でもいれば、新規開拓より先にその原因を確認することが最優先です。新規を10社取っても既存が10社離れれば売上はゼロです。
やってはいけない「売上対策」3パターン
「効果がある」と思ってやっているが、実際には利益を削るだけの施策があります。心当たりがないか確認してください。
❌ やってはいけない「売上対策」3パターン
「効果がある」と思ってやっているが、実際には利益を削るだけの施策。心当たりがないか確認する。【NG①】競合に対抗して価格を下げる
「競合が安いから注文が来ない」と思い込み、300円弁当を280円に値下げ。食数は少し増えたが、1食あたりの利益が薄くなり月間利益が逆に減少した。
✅ 正しい対処:価格を下げる前に「なぜ選ばれていないか」をヒアリングで確認する。多くの場合、価格ではなく「知られていないこと」や「信頼がないこと」が原因。価格競争に入ると抜け出せなくなる。
【NG②】種類を増やせば売れると思い込んでメニューを大量追加する
「選択肢が多ければ顧客が喜ぶ」と20種類以上のメニューを用意。仕込みが複雑になり製造コストが上昇。ロスも増え、利益率が大幅に低下した。
✅ 正しい対処:コアメニューを3〜5種類に絞り込んで品質を上げる方が、顧客満足度もコストも改善しやすい。種類よりも「選びやすさ」と「品質の安定」が受注継続の鍵。
【NG③】新規開拓に集中して既存顧客への対応が手薄になる
「売上を上げるには新規が必要」と営業リソースを新規開拓に全振り。既存顧客へのフォローが止まり、3ヶ月で5社がリピートを止めた。新規で取った3社分より多く失った。
✅ 正しい対処:既存顧客の維持コストは新規獲得の5分の1。まず既存顧客の離脱を止めてから新規開拓に力を入れる順番が正しい。月次の既存フォロー件数をKPIとして管理する。
特に「値下げ」は一度やると元に戻すのが難しい。担当者の中で「あの業者は交渉すれば安くなる」という認識が定着すると、次回も同じ要求が来ます。値下げで売上を維持しようとすると、利益率が下がり続けて最終的に経営を圧迫します。
既存顧客の離脱を止めることが最初の一手
新規顧客を獲得するコストは、既存顧客を維持するコストの5倍かかるとされています。売上が伸び悩んでいる時、多くの事業者は「新規開拓が足りない」と考えますが、実際には既存顧客の離脱が同じペースで起きているケースが多い。
まず自社の顧客リストを確認して「3ヶ月以上発注がない顧客」を洗い出してください。その顧客に電話でヒアリングするだけで、離脱の原因が分かります。担当者が変わったのか、競合に切り替えたのか、単に行事がなかっただけなのか——原因によって対策が全く変わります。
新規開拓は「仕組み」として設計しないと続かない
新規開拓が続かない最大の原因は「営業担当者だけに任せていること」です。担当者が忙しければ新規営業は止まります。仕組みとして設計しないと、売上の波が大きくなるだけで安定しません。
新規開拓を「仕組み化」するには、月次のKPIを決めて管理することが必要です。「月に何件の新規アプローチをするか」「そのうち何件が見積もり提出まで進むか」「成約率は何%か」という数字を把握することで、売上予測が立てられるようになります。月20件のアプローチで成約率5%なら月1件の新規獲得、年12社という計算になります。
全員営業の仕組みを作ると売上が変わる
営業担当だけが営業するのではなく、配達・事務・製造の各スタッフがそれぞれの立場で売上に貢献できる仕組みを作ることで、新規情報の収集量と既存顧客のフォロー品質が大幅に向上します。
👥 「全員営業」の仕組み化:誰が・何を・どのタイミングでやるか
営業担当だけが営業するのではなく、全スタッフがそれぞれの立場で売上に貢献できる仕組みを作る担当者
日常的にできること
月次でできること
KPI(目標)の目安
配達
スタッフ
配達時にチラシ・カタログを手渡し。近隣の法人に気づいたら報告する
ルート上の新規候補をリストアップして営業担当に渡す
月5件の新規候補情報を上げる
事務・
電話担当
問い合わせ電話を受けた際に「近隣の会社にご紹介いただけますか?」と一言添える
休眠顧客(3ヶ月以上未発注)に電話でヒアリング
月3件の休眠顧客に連絡する
調理・
製造スタッフ
「このメニューは人気がある・ない」という現場感覚を記録して上げる
季節・行事に合わせたメニュー提案を月1件出す
月1件の改善提案・新メニュー案
配達スタッフが配達ルート上で「ここに法人がある」と気づいて報告する仕組みを作るだけで、営業担当者が1人で動くより多くの情報が集まります。報告件数をKPIとして管理し、情報が成約につながったらフィードバックすることで、自然に協力する文化が育ちます。
年間の需要の波に合わせて先手を打つ
宅配弁当・仕出し弁当の需要は季節によって大きく変動します。需要が来てから動くと受注できません。需要の2〜3ヶ月前に営業を始めることで、企画・決裁のリードタイムをカバーできます。
📅 年間の売上アップ施策カレンダー
季節ごとの需要の波に合わせて先手を打つ。年間スケジュールとして管理することで取りこぼしを防ぐ時期
やるべき施策
狙うべき新規顧客
1〜2月
春(4〜5月)向けの新規営業リスト作成・アプローチ開始。既存顧客への年度末特別メニュー提案
新入社員歓迎会を予定している企業・教育機関。年度替わりの行事担当者
3〜4月
新年度スタートに合わせた日配給食の新規開拓。春限定メニューの配布・試食営業
新学期を迎える学校・工場・事業所。新規採用で社員数が増えた企業
6〜7月
夏バテ対策メニューの提案。既存顧客への「夏の限定プラン」案内。休眠顧客への掘り起こし
社員食堂がない中小企業・工場。夏のイベントを予定している企業
9〜10月
秋の行事シーズン向け仕出し弁当の先行提案。年末に向けた高単価プランのカタログ配布
運動会・文化祭を予定している学校・スポーツ団体。秋の法要を控えた葬祭会社
11〜12月
忘年会・年末需要への先行営業。来年度の日配給食の新規契約を取り込む
忘年会を計画中の企業総務担当者。来年度の予算を決める段階の企業
よくある質問
宅配弁当・仕出し弁当の売上アップについてよく寄せられる質問をまとめました。
まず既存顧客の離脱を止めることから始めてください。新規開拓より既存顧客の維持の方がコストが5分の1で済みます。3ヶ月以上発注のない顧客をリストアップして電話でヒアリングするだけで、離脱の原因が分かり対策が打てます。新規開拓は既存顧客の維持が安定してから取り組む順番が正しいです。
値下げより先に「なぜ選ばれていないか」を確認してください。多くの場合、価格ではなく「知られていないこと」や「信頼がないこと」が原因です。価格を理由に断られた場合でも、対応力・品質・柔軟性で価格差を正当化できる場合があります。値下げに応じると価格が基準になり、次回も同じ要求が来るため、安易な値下げは避けることをおすすめします。
「強制する」のではなく「仕組みとして設計する」ことが重要です。配達スタッフに「気づいた法人があったら報告する」というルールを作り、報告件数をKPIとして管理する。成果が出たらフィードバックする循環を作ることで、自然に協力する文化が育ちます。最初は月5件の報告という小さなKPIから始めることをおすすめします。
メニューを増やす前に、現在のメニューの中で最も発注数が多い上位3〜5品を特定してください。その品目の品質を上げて、カタログやメニュー表での見せ方を改善する方が、大量のメニュー追加よりも効果的です。メニューを増やすと仕込みが複雑になり製造コストが上がるため、コアメニューを磨いてから拡張する順番が正しいです。
「原因を特定してから動く」が売上アップの最短ルート
売上が上がらない時に「何か新しいことをしなければ」という焦りが生まれますが、原因を特定せずに動くと資源が分散して全部中途半端になります。4要素の掛け算のどれが問題か、診断チャートで今日確認する——それだけで取り組む優先順位が明確になります。
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